焼き鳥屋の喧騒が聞こえてきた。
タレの匂いと、煙が充満する店内。
店員さんの掛け声と、調理場からの音
「奈々先生」
呼ばれて視線を戻すと、洋祐先生がビールのジョッキを持っているから、私も目の前のビールを持ち上げる。
「おつかれ」
「お疲れ様です」
ゴツンと小さな音を立てたジョッキを持ち直し、一気に喉に流し込む。ここ数週間の気持ちも呑み込むように……
「いい飲みっぷりですね」
「洋祐先生こそ」
ふふっと笑うと、洋祐先生も口の端を持ち上げていた。
それからしばらくは幼稚園とは関係のない話でお互い笑い合っていた。
焼き鳥の追加注文したお皿が置かれた時、洋祐先生が眼鏡を外しテーブルに置いた。
園長先生によく似た優しい目が、私に向けられ綺麗な弧を描いている。
「洋祐先生、眼鏡外すと意外とイケメンですね」
「意外と?眼鏡してたらそうでもないってことですか?」
「そういう意味じゃないですけど……」
クスクスと笑う洋祐先生をいつもより近くに感じる。
「奈々先生と飲む酒は美味い」
「それ、もうオジサンの意見ですね」
それにも爆笑している洋祐先生は酔っているのかもしれない。
「奈々先生。答えたくなかったら答えなくていいですから…」
「なんですか?」
「付き合ってる人はいますか?」
真っ直ぐに私を見つめる目がそこにあった。
なぜかその目を直視できずに、ビールのジョッキを見ながら答える。
「……いません」
私の鼓動が早くなる。
その訊き方で、何を言おうとしているのか想像がつく。
もう少し軽い感じで訊かれたのなら、軽く答えられるのに、こんな重たい空気では、次にくる言葉が読めてしまう……
「奈々先生……」
「っ洋祐先生、この卵焼きも頼んでいいですか?」
ドキドキとうるさい心臓に、勝手に声が大きくなった。
洋祐先生は、フッと息を吐いて、微笑んで「どうぞ」と言った。
あからさまな会話の逸らし方だったのに、洋祐先生は文句一つ言う訳でもない。
タレの匂いと、煙が充満する店内。
店員さんの掛け声と、調理場からの音
「奈々先生」
呼ばれて視線を戻すと、洋祐先生がビールのジョッキを持っているから、私も目の前のビールを持ち上げる。
「おつかれ」
「お疲れ様です」
ゴツンと小さな音を立てたジョッキを持ち直し、一気に喉に流し込む。ここ数週間の気持ちも呑み込むように……
「いい飲みっぷりですね」
「洋祐先生こそ」
ふふっと笑うと、洋祐先生も口の端を持ち上げていた。
それからしばらくは幼稚園とは関係のない話でお互い笑い合っていた。
焼き鳥の追加注文したお皿が置かれた時、洋祐先生が眼鏡を外しテーブルに置いた。
園長先生によく似た優しい目が、私に向けられ綺麗な弧を描いている。
「洋祐先生、眼鏡外すと意外とイケメンですね」
「意外と?眼鏡してたらそうでもないってことですか?」
「そういう意味じゃないですけど……」
クスクスと笑う洋祐先生をいつもより近くに感じる。
「奈々先生と飲む酒は美味い」
「それ、もうオジサンの意見ですね」
それにも爆笑している洋祐先生は酔っているのかもしれない。
「奈々先生。答えたくなかったら答えなくていいですから…」
「なんですか?」
「付き合ってる人はいますか?」
真っ直ぐに私を見つめる目がそこにあった。
なぜかその目を直視できずに、ビールのジョッキを見ながら答える。
「……いません」
私の鼓動が早くなる。
その訊き方で、何を言おうとしているのか想像がつく。
もう少し軽い感じで訊かれたのなら、軽く答えられるのに、こんな重たい空気では、次にくる言葉が読めてしまう……
「奈々先生……」
「っ洋祐先生、この卵焼きも頼んでいいですか?」
ドキドキとうるさい心臓に、勝手に声が大きくなった。
洋祐先生は、フッと息を吐いて、微笑んで「どうぞ」と言った。
あからさまな会話の逸らし方だったのに、洋祐先生は文句一つ言う訳でもない。

