コクリバ 【完】

「行きましょうか…」

洋祐先生はそれだけ言うと、線路沿いの道を歩きだしたから、黙って後ろを歩いた。

しばらく何も話さずに歩いていたら、不意に声を掛けられた。

「奈々先生、焼き鳥は好きですか?」

声を出す代わりに、首をカクンと縦に振る。

「駅の反対側に、綺麗ではないけど、美味しい焼き鳥屋があるんです。ついてきてください」

返事を待たずに洋祐先生は背を向けて歩き始めた。



ここで逃げたくはない―――
せめてもう少し、あの子たちが卒園するまでは……

踏切を超えて洋祐先生が歩いて行く。

置いて行かれないように、小走りでその後に続いた。

普段は来ない駅の北口の繁華街を抜けると川沿いの道に出た。

一軒の、見た目が本当に綺麗そうではないお店の前に着くと、洋祐先生はやっと後ろを振り返った。

「この匂いがたまらないでしょ?」

そう言うと洋祐先生がニッコリ微笑んだ。

辺りには焼き鳥の焦げたタレの匂いが、漂っていた。