コクリバ 【完】

言ってしまってすぐに後悔した。

馬鹿なこと言った。
私は何を言ってしまったんだ。
絶対、変な女だと思われた。

恥ずかしくて顔が赤くなる。


「すみません。なんでもないです」

照れ笑いを顔に貼り付け、他の二人に追いつこうと谷さんの前を通り過ぎた時……

「……奈々……」

背後から、低い声でそう呼ばれた。


高木先輩……


胸がギュウと縮まる。

足が動かない。

違うと分かっているのに、あの人に呼ばれたみたいで……


左頬で笑う先輩が後ろに立っている。
「奈々」と私を呼び、片手を出して私がそれを掴むのを待っている―――……


そんなありもしない状況が、頭の中に甦ってくる。


先輩――――


後ろを振り向くと、あの人ではない人が、木漏れ日の中で困った顔で立っていた。


胸にポカンと穴が開いたみたい。

涙が一筋つっと流れた。