コクリバ 【完】

「立てる?」

低い声が耳の奥に侵入してくる。


あの人の声……


「どうした?」


あの人の声がする。


「どこか捻ったか?」


その口調まで似ている。
穏やかで、抑えた話し方。

「おい。大丈夫か?」

手を握ったまま動かない私を、その人に引っ張り起こされる。

「大丈夫そうだな」

それだけ言うと、他の二人の方へと歩いて行こうとする。

「ま、待って」

絞り出すように出た私の声に、その人が振り返った。

「あ、あの……奈々って、呼んでもらえませんか?」