コクリバ 【完】

その後、吉岡は家まで送ってくれた。
何も言われないから、何も言わないで、二人ともただ黙々と歩いた。
結局、吉岡の優しさに甘えていたんだと思う。
次の年、私たちは付き合うことになったけど、この日のことがずっと二人の頭からは離れなかった。


今から思えば、ウダウダと高木先輩のことを諦めきれなかった私に、トドメを刺したのは橘先輩の赤い傘。

この件は、私に失恋だけじゃなく、嫉妬という感情もいだかせた。

真っ黒なその感情を誰にも気づかれないように胸の中に収めたのは、当時の私としてはよく頑張ったと思う。

もう誰かを好きになったりしない―――
そう思ったり、
高木先輩より素敵な人を見つけて、見返してやる―――
そんな風に考えたり、
失恋してからも大いに影響を受けていた。

そんな恋だった。

それまでの子供の恋愛とは明らかに違う種類の、
心の奥底から求め、慕った、そんな大人の恋愛だった。

この恋で私が学んだことはたくさんある。
学びたくなかったことまで学んだけど……
それも私を大きく成長させてくれた大事な出来事だったんだろう。


高木先輩の卒業式は今もハッキリと覚えている。
なんなら自分の卒業式のことよりも鮮明に覚えている。

あの日は分厚い雲が垂れ込め、今にも雨が降り出しそうな日だった。