コクリバ 【完】

吉岡は前にあった椅子に座っていた。

「あの時、告ってたら、おまえ、どうしてた?」
「どうしてたって……」
「あの前の日、中学の頃付き合ってた女が、兄貴だっていう怖そうな男を連れてうちにやってきたんだ。そいつとは高校別々になって別れたつもりだったんだけど、まだ別れないって言われて…」
「……」
「俺が、他に好きな奴がいるって言ったのが気に入らなかったみたいで、その女と付き合うなら女をめちゃくちゃにしてやる、みたいなこと言われた」
「そんな……」
「連れて来た男だって本当の兄貴じゃない。そんな女だったけど、あの時はマジでビビってて……情けないよな……」
「ううん」
「あの日、ここにいたんだ。待ち合わせの前、ここでジッと考えてた。おまえが来なければいいって思ってた。なのに、おまえは来てた」
「うん」
「あの時、言ったことは……言いたかったことじゃない」
「……うん」

吉岡と目があったから、肯いて応えた。

「でもすぐに後悔した。あの後、高木さんが俺のとこ来て、さっきの女誰だって、しつこく聞いてくるから……」
「あ……」
「そういうことなんだろ?インターハイの予選の時に確信したよ。あの人、俺じゃなくてオサムに、あの女たちが泊まりかどうか聞いてきてくれって……普通聞くなら俺だろ?おまえの知り合いなんだし……だから高木さんは知ってるんだって思った」
「……」
「あの人と、付き合ってたのか?」