コクリバ 【完】

吉岡の腕を掴む手が痛い。

この前と一緒だと思ったけど、抵抗しなかった。

吉岡は体育館を通り過ぎ、コクリバを通り過ぎ、研修棟の裏庭まで私を引っ張ってきた。

そこには研修棟の裏口があって、吉岡がドアノブを回したら裏口が開いた。

「入れよ。何もしないから…って言うか、この前のことは、すごい後悔してて、悪かったって……あぁ、もういいから早く入れって」

押されるようにして、初めて研修棟の中に入った。

裏口から入ってすぐのところに給湯室があって、そこの椅子に座らされる。

歯がカチカチいってるのは、寒いから……
指先が震えているのも、寒いから……
涙が止まらないのも、胸が痛むのも、寒いからで……あの人のせいじゃない……


気が付くと大きなバスタオルが頭から掛けられていた。

「飲めよ」

そう言って吉岡が渡してくれたのは、湯気が立っている熱いコーヒー。
マグカップを両手で握りしめた。

「それしかないから、我慢して飲め」

かなり甘めの濃いコーヒーが、冷えた体に染み込んでいく。

「…ありがと…」

「着替え、取ってくるから、ここにいろよ」

「……」

「緒方!しっかりしろ!」

「…うん…」