コクリバ 【完】

「変えて良かったよ。良い作品ができた。2年前を思い出すようにして夢中で描いた。辛かったけどね。それが評価されたんだろうね」

市原先輩が静かに笑う。

「自虐的ですね」
「あぁ。俺もそう思う」
「あのモデルは、美里さんだったんですね」
「…さぁ、どうかな。重ねてないとは言わないけど、あれは君だよ、奈々ちゃん」
「わ、たし…?」
「そう。綺麗になったよ。あいつのせいなんだろうね」

市原先輩が私を見た。

「高木先輩にっ…先輩に、何か言ったんですか!」
「……」

市原先輩が私から視線を逸らすから胸が苦しくなる。

「市原先輩、私に約束してくれましたよね?彼女ってことにしておこうって言った時に、高木先輩にはちゃんと言っておくからって…先輩、そう言いましたよね?言ってくれましたよね!」
「……」
「電話で聞いたときも、ちゃんと言ったって……高木先輩にちゃんと説明したって……」

声が震える。

「あいつね、俺に言ったんだよ。俺がバスケを辞めた時に。他に女なんていっぱいいるだろ?って。女の心変わりなんてよくある話だろ?って。そう言ったんだよ」
「……」
「だから戻って来いって。インターハイに出たいだろって……美里のことは忘れろって……」
「……」
「よくある話なんだろ?」
「違います!」

違う。
高木先輩は、本当に……

「セイヤに言ったよ。奈々ちゃんをくれって」
「え……」