コクリバ 【完】

「マジ？」
「うん」
「いつ？」
「それのあと」
「なんで？」
「うーん…」
「市原先輩が人物？風景しか描かないんじゃないの？」
「うん。チャレンジらしい」
「あー」
ってあんまり納得してないよね。

「ヌード？」
「んなわけないじゃん」
「ふーん」
絶対聞いてないよね。
女の友情なんて興味のある事にしか反応しない物だ。

「奈々、それ二人きり？」
「うん、そうじゃない？」
「やばくない？」
「何が？」
「先輩さ、めっちゃかっこいいじゃん。ファンもいっぱいいるからさ、恨まれるよ」
「だよねー」
今頃、軽く返事をしたことを後悔した。

「あとさー、奈々、惚れちゃうんじゃない？」
「は？」
「だって先輩のあの顔見てたら、みんな惚れるって。先輩が二年の時に、見られただけで妊娠させられたって噂があったらしいよ」
「え？」
「それはないだろうけどさ」
「いや…」
普通に考えてありえないでしょう。
と言いたかったけど、言わせてもらえなかった。

「十分気を付けといた方がいいよ」
最後の一言を声を潜めて言い切った絢香は、なぜか満足気。

言い返そうとしたけどちょうど他の美術部のみんなも集まり始めて、私たちもスケッチブックを取りに行った。