なんで?
私よりも吉岡の方が大事なんですか?

そんなこと今更言える訳ないけど、ショックを受けてたところに、

「あんたに庇われたくなんかねぇよ」

机や椅子の間から立ち上がり、吉岡が叫んでいた。

「吉岡!なんだその口の訊き方は!」

今までドアのところにいた菊池雅人が走ってくる。

「こんなやつに守ってもらいたくねぇんだよ」

「吉岡!」

菊池雅人が吉岡の胸ぐらを掴んでも吉岡は高木先輩から視線を逸らさなかった。

「あんたの方がもっとひどいことしてんだろ!キャプテン!」

みんなが吉岡を見てた。

高木先輩もゆっくり吉岡を振り返り、菊池雅人も吉岡を掴んでいた手を離した。

同時にそれまで私の横にいた兄が、立ち上がり歩いて行く。


ダメだ。
お兄ちゃん、行っちゃダメ…


「あんただってあいつの家で何してたんだよ」
「やめろ、吉岡」

高木先輩が低く諭すように言う。

「チャリに乗せて、家に行って、何してたんだって。しばらく出てこなかっただろうが!」

―――静かだった。

さっきまで騒々しかった教室が、水を打ったようにシンと静まった。

吉岡に見られてた。

その場にいた全員が息を呑んだ時、

「どういうことだ?」

それまで後ろの方にいた兄が、いつのまにか高木先輩の目の前にいた。