「奈々!」

兄の声がする。

「何やってんだ!」
「いたぞ!こっちだ」
「おまえ現役か?」
「こんなとこ連れ込んで何してた!」

一気になだれ込んできた大勢の人たちが、一斉に大声を出している。

ガシャン

大きな音がしてそちらを向くと、吉岡が机や椅子に絡まるように倒れていて

「やめろ!中山!」
「離せ!」
「現役は外出ろ!」

中山さんが吉岡に掴みかかりそうなのを、菊池義人たちが止めていた。

「吉岡!」

オサムッチが庇うように吉岡の前に立った。

「何してんだよ」
「おまえらどけ!」
「落ち着け中山!出てろ!現役は入ってくるな!雅人、入口閉めろ!」

怒号が飛び交う中、菊池義人の声がひと際大きく響いて、何人かの人が教室から出て行った。

その時だった。

閉じられたドアが音を立てて開き、肩で息をしながら入ってきた人がいる。

背が高くて、切れ長の目をした高木先輩。その人だった。