コクリバ 【完】

リビングの中には、兄と中山さんと、大学の友達の二人…だけ
さっきと同じ人たち。
兄たちはバスケの試合のテレビを見ていた。

「玄関に落ちてたビニール袋、何?」

なんでこんなことくらいでドキドキしてるんだろう。

「あー。さっき後輩がDVD持ってきたときのやつな。濡れてたから玄関に放置しといた」

私の話よりも画面に夢中の兄たちは、みんな同じような姿勢で画面を見て、拳を握っている。
そして同じタイミングで悔しがったり、喜んだりしている。

DVDを持ってきた人は?
誰が持ってきたの?

兄と私が4歳違いだから、
兄と高木先輩は2歳違い。
兄がまだうちの高校のバスケ部にいたとき、
1年には高木先輩がいたはず…

うちに来たんだ。

高木先輩が、うちに来てたんだ。

絶対そう。
バスケのDVDを持ってきたんだ。

頬が熱い。

高木先輩がうちの玄関に立ってるとこを想像すると、叫びそうになる。

もし、あのとき、私がコンビニをすぐに出ていたら、うちで会っていた---かもしれない。

どうしよう……

この頃はまだ必死で高木先輩への気持ちに、
気が付かないようにしていたんだと思う。