コクリバ 【完】

しばらく無言で先輩の褐色の瞳を見ていた。

会いたかった。
声が聞きたかった。
先輩に触れたかった。

付き合っていたころと変わらない端正な顔を見上げて、やっぱり私は高木先輩が好きだと思った。

だけど、せっかく会えたのに、私は、汚れた制服に動かない身体……

みじめだ―――

先輩から目を逸らし、また下を向いた。
そうするしかなかった。

このまま立ち去ってくれますように
こんな姿を忘れてくれますように……

「貸せ」

なのに高木先輩は私の横に落ちていたカバンを拾い上げて、自転車の前カゴに入れた。
何をする気だろうと思っていると、右腕を掴まれグッと上に引っ張り上げられた。

「ったっ……」
「どうした?」

左足が地面に着いて、ズキンと大きな痛みが走る。

「どこが痛い?」

涙が頬をつたっていった。

涙が出たのは痛みのせい。
高木先輩が優しいから、その胸に甘えたくなった訳じゃない―――