ドキドキする。
右手にばかり意識がいく。
こんなに甘い感覚があることを初めて知った。
先輩は私を見つめたまま左頬を上げると、
「でも、その女は何でもできる理想の女として書かれてるらしいからな。おまえとはちょっと違うな」
そう言うと嬉しそうに笑い出した。
なにそれ。
褒められたと思っていたのに、バカにされてたの?
「今やると犯罪だよな。でも、それって男の理想だよ…」
低く囁くように漏れたその言葉に、どうしようもなく胸が騒いだ。
これまで経験したことのないその動悸は、私の思考を奪うのに十分で、
「奈々……」
低く痺れるようなその声、妖艶に笑った目を見ていられなくて、視線を逸らして自分の膝を見つめていた。
「……固まるなよ」
そう続けた先輩は、また顔を隠して笑っている。
最後の方はわざとからかったんだと気付くのはそれから数分した後だった。
この時から、私の中で源氏物語の主人公の顔は高木誠也の顔になった。
右手にばかり意識がいく。
こんなに甘い感覚があることを初めて知った。
先輩は私を見つめたまま左頬を上げると、
「でも、その女は何でもできる理想の女として書かれてるらしいからな。おまえとはちょっと違うな」
そう言うと嬉しそうに笑い出した。
なにそれ。
褒められたと思っていたのに、バカにされてたの?
「今やると犯罪だよな。でも、それって男の理想だよ…」
低く囁くように漏れたその言葉に、どうしようもなく胸が騒いだ。
これまで経験したことのないその動悸は、私の思考を奪うのに十分で、
「奈々……」
低く痺れるようなその声、妖艶に笑った目を見ていられなくて、視線を逸らして自分の膝を見つめていた。
「……固まるなよ」
そう続けた先輩は、また顔を隠して笑っている。
最後の方はわざとからかったんだと気付くのはそれから数分した後だった。
この時から、私の中で源氏物語の主人公の顔は高木誠也の顔になった。

