送ってくれなくてもいいと言ったのにどうせ戻る方向一緒だからって、五十嵐と二人並んでスペイン坂を上っている。
一応、周りに社内の人間がいないかキョロキョロしてたら「余計怪しいっての」って五十嵐に言われた。

確かにそうだった。

「で、おまえは何で木村課長があんなに疲れてるか知らないんだな」
「うん。催事の準備だって他の人はあそこまで疲れてるようには見えないし……」
「本当に付き合ってなかったんだな」
「え?まだその話?」

てっきりその疑いは晴れたと思っていた。

「なら、駐車場行ってみるか?さっき木村さん、駐車場のことを気にしてただろ」
「うん」
「ま、戻るついでにちょっと巡回してくか」

Be!渋谷店の地下は駐車場になっている。
A館とB館それぞれに駐車場があって、それぞれにエレベーターがついている。
たけど一か所が廊下みたいにつながっているから分かりにくくて、初めて来た人は迷路みたいと思うらしい。

「そうだね」

A館には地下にショップと私たちの事務所みたいなものがあるけど、B館にはなくて駐車場だけ。

五十嵐と私はB館から入ってA館の事務所の方まで歩いてみることにした。