いつかあの子は王都一の装飾品職人になるとマドレーヌは力強く宣言した。それは自信に満ちていて確信しているようだった。

リルは頭につけた髪飾りにそっと触れる。メアがくれたこの髪飾りはリルにとっては何にも代えがたい大切なものだが、これが国宝級のお宝になる日もそう遠くないのかもしれない。


「メアはとても集中してしまう子でねん、一度作り始めたら周りが見えなくなるのん。今も作業室に籠もってるのよん」


「困った子だわん」とマドレーヌは溜め息を吐いたが、それはメアが作品に愛情を注いでいるからこそのことだ。きっとそれをマドレーヌも承知しているのだろう、表情は明るかった。

「呼んでくるから待っててねん」と言い残すとマドレーヌは店の奥へと消えていった。

しばらくするとドタバタと走り回る音が聞こえてきて、それが次第に大きくなるとメアが息をあげて走ってきた。

その後ろからはマドレーヌがやって来て「やれやれ」と言わんばかりに溜め息を吐き呆れた表情を浮かべていた。


「ごめんなさい!約束していたのに…」


メアはリル達のもとまで来ると肩を上下させて息を整える。

「いや、大丈夫だよ」とアーディは微笑んだ。


「メアのことだからきっとそうだと思っていたし、それにメアが働いている場所をリルに案内したいとも思っていたんだ」


メアは申し訳ないという表情をリルにも向け「リル本当にごめんなさい」と謝る。