「どうだい、何かつけてみたいとは思わないかい?なんなら何かお嬢さんにぴったりなものを探してみようか?例えばこれはどうだい?それともこっち?」


次々に飛んでくる疑問に答える間もなく話は進んでいく。


「あ、いえ、私お金ないですから…」

「なあ、お嬢さん好きな色はあるかい? お嬢さんならどんな色でも似合うだろうなあ。

ほら、この赤い耳飾りも可愛くて素敵だろうけど、青い髪飾りもお嬢さんの優しい胡桃色の長い髪にはよく映える。こっちの黄色い花の飾りだってお嬢さんの可愛らしい雰囲気にはぴったりだ。

どうだい、気になるものはあったかい? ああ、そうだ、それともこっちの透明の宝石の首飾りなんてどうだい? これが最近仕入れた中じゃあ結構な上物でね」

「今なら安くしておくよ」という、ぐいぐい進んでいくお兄さんの勧誘に困って「あ、じゃ、じゃあ…」と答えたところで、突然後ろから腕を引っ張られた。

驚いて声を上げる前にその人物は「少しいいか」という声を発した。

振り返るとすぐに分かったのは、その髪の色が金色だったこと。

触れたら消えてしまいそうなくらい儚くて優しい金の髪がサラサラと揺れている。

けれどその表情はほとんど無表情に近く、まるで怒っているようにも見えた。


「この娘、借りていくぞ」


するとそのままリルの腕を引っ張って、その人は人混みをかき分けるようにして歩いた。