シオンは一体何者だろう。


シオンは騎士団員達に指示を出して従わせている。そういえばリルが王都まで馬に乗せてもらった時も、騎士団員はシオンに敬意を払っていた。

騎士団員を従える者、それってつまりは騎士団長ではないだろうか。

騎士団長であるなら騎士団を指揮できることに納得がいく。例え所属する騎士団が違えど、人々を護るために他の騎士団とも協力して行動に移すことも頻繁にあると聞く。

いや、騎士団長ならこんなにも自分勝手に神出鬼没に現れるようなことはしないだろう。となればまた別の存在なのかもしれない。

そう考え出すとリルの思考は混乱を極めた。

どの答えも腑に落ちない。どれも間違いなような気がする。様々な可能性がよぎり、次々に浮かんでくる考えが思考回路をいっぱいにしていった。


「おい、大丈夫か?」


座り込むリルにシオンが言った。

その言葉で思考は消え失せた。あれほどまでに脳を満たしていた考えはどこに行ったのかと思うほどに、全て消えた。


「ああ、うん」


リルはなんとかそれだけ言えた。まるで言葉も知らない幼子のような言い方に、リルは自分のことだけど恥ずかしくなった。

呆然としているようにも見えるリルを見たシオンは、座り込むリルと視線を合わせるようにしゃがみ込むと言った。


「すぐに医者が来る。診てもらったら帰って寝ろ」