「とりあえず、僕達も店の中に入ろう。もうすぐリュートさんがスピーチするから」

「昨日から内容をあれこれ考えていたんだよ」とアーディは眉を下げて笑った。

シオンはどうするのだろうとそちらを見ると、シオンはアーディに続いて店内へと向かっていく。眉間の皺は寄ったままだ。

リルもそれに続いて店に入った。

店内はたくさんの人が詰めかけており、後から来たリル達が座れないほどに混雑していた。皆、改装を祝おうと一張羅なのだろう服を着て着飾っている。

近くの席の客と談笑を楽しみながら、今か今かと今日の主役であるリュートが出てくるのを待っていた。

すると店の奥、厨房の方から一張羅のスーツを着たリュートが登場して、拍手が巻き起こる。皆、自分のことのように嬉しそうに、緊張気味のリュートを出迎えた。

「えー、この度はこの『リュートの店』の改装祝いにお出でくださって、ありがとうございます」

リュートが話すのを皆嬉しそうに聞き入っている。この店は街中から愛されているのだとリルは感じた。

「お祝いにこんなにたくさんの花をもらっちまって、すごくありがたいです」

リュートが視線を向けたのは、カウンターの上に溢れんばかりに載せられた大量の花束。

花の国ダンディオーネでは祝い事に花束を贈るのが一般的だが、こんなに花束があると飾り切れないのではとリルは心配に思うほどだった。

それを考えてシオンは花束ではなく珍しい実を贈ったのだろうか?

そう思い当たって隣にいるシオンを見つめた。