隣町からは数人の男女が乗り込んできた。

人数が多くなったこともあって、おじさんとの会話はそこで途切れた。

停留所で停車するたびに人が降りては乗っていく。

それを何回か繰り返すと、唐突に馬借のおじさんは言った。


「次の町で少し止まりますよー」


どうして、と思っていたけどすぐに気づいた。

もう陽が高い。


次の町に着くころにはお昼の時間だろう。


太陽が空のいちばん高いところに上ったころ、馬車は徐々にその速度を緩めていった。


「シャルクラーハ、シャルクラーハ。

少し止まります。次の出発は2時間後＿＿」


ぞろぞろと乗客は降りていく。その列に混ざってリルも馬車を降りた。


シャルクラーハは商業の町だ。

王国中の色んな商品が溢れ活気で満ちている。


丁度お昼の時間帯、何か食べ物を買おうと町の中に行くとリルは思わず足を止めてしまった。

目の前に広がるたくさんの屋台、道いっぱいに広がる人。

アルトワールとは全く別の世界だと思ってしまうほどに、そこはたくさんの人であふれていた。

まず自分の故郷では見ることのない景色に圧倒されていると、後ろから声をかけられた。


「嬢ちゃん、旅行者かい？」

声をかけたおばあちゃんは屋台で食べ物を売っているらしかった。

何やらおいしそうな匂いが漂っている。

「あ、はい」

「腹減っただろ、食べていきな」