「そういうきみはどこから来たの?」

「アルトワールだよ」

リルの答えにアーディはひどく驚いて「アルトワール!?」とリルの言葉を繰り返した。

「アルトワールって言ったら、すごく有名な花の産地じゃないか!」

「アルトワール出身の人なんて初めて見た」と驚きを隠せないアーディに「そんな、珍しくはないと思うよ」とリルは苦笑いをした。

「でも、どうしてアルトワールから王都へ?アルトワールなら花を栽培する仕事があるんじゃ…」

その問いかけにリルは服の下に隠れているペンダントを握りしめる様に、胸のあたりで拳を作る。


「探している人がいるの」


リルは噛みしめる様に言った。


「幼い頃に約束をしたんだ。いつか必ずまた会おうって」


そこまで言ってからリルははっとしてアーディの方を見ると、「立派な理由じゃないんだけどね」と自嘲した。

しかしアーディは真面目な顔をして首を横に振り「そんなことないよ」と言う。


「とても大切な約束なんだね」


リルはまさかアーディからそんなことを言ってもらえるとは思ってもいなかった。「しょうもない」と笑われて終わるだろうと思っていた。だからこそ反応に遅れてしまったのだ。


「ありがとう」


リルは心から微笑んだ。