「お前さん、とりあえず住む場所がないんじゃろう? だったら、ワシが提供してやろう」

「え、本当ですか!」

「ああ。この店は二階建てでのう。一回は店じゃが、二階は三つ部屋あるのじゃ。以前は下宿生が使っておったが、今はワシしか使っておらん。二部屋余っておるからそのうち一つをお前さんに貸そう」

このオリバーの申し出はリルにとってありがたい以外の何物でもなかった。

「ありがとうございます!」

「その代わりしっかり働いてもらうからのう」

「頑張ります!」


大きな声で返事したリルに、オリバーは「元気だけはよいのう」と呟いた。


「では、俺はこの辺で失礼する」

「またのお越しをお待ちしておりますぞー」

「ああ、また頼む」


これを逃せば今度はいつ会えるか分からない。リルは慌てて彼を追いかけた。


「待ってください!」


大声を出して店の外まで追いかけるリルに、彼は驚いたように立ち止まって振り返る。


「何だ」


走って追いかけたため、リルは息が切れた。それを整えながら「あなたに言いたいことがあるの」と言った。


「あの店で働けるチャンスをくれたこと、ありがとう」

「言っただろ、あれはゲームだと。俺は楽しいものが見れたと思っただけだ。感謝されることじゃない」

だからお辞儀なんてするなと彼は言った。

「俺はあの店の常連で、あの店が好きなんだ。しっかり頑張ってくれよ」

じゃあな、と去って行こうとする彼をリルはまた引き留めた。