次第に景色が鮮明になっていく。


「夜明け…」

「この調子なら今日の午後には王都に着くだろう」

「そんなに早く?」

馬車ならあと2日はかかるはずなのに、そんなに早く着くものだろうかとリルは首を傾げる。

すると彼は「馬だから馬車より早いのは当然だ」と溜め息を吐いた。


「馬車はあちこち停車するから、その分時間がかかる」

「ああ、なるほど」


それからは徐々に明るくなる景色と朝焼けを眺めていた。

王都に向かう途中、幾度か休憩として砦で休んだ。リルが食べ物を食べていないことを知った騎士団の人はパンやスープを与えてくれた。


「しかし、お前が王都に向かっていたとはな」


休憩を終えて馬に跨がりながら彼は言った。まるで小馬鹿にするような笑みを浮かべている。


「どういう意味です?」

「別に」

そうは言うものの何か言いたそうなのは伝わってきた。

どうせ、常識知らずの田舎娘がどうして王都なんかに行く必要があるのかだとか、そんなことを思っているに違いないとリルは思った。

馬を走らせて前を見据える彼に「意外ですか」とリルが彼は尋ねると「まあな」と頷いた。


「しかし並みでない理由があるのだろうな。売り飛ばされそうになってもやめないだけの理由が」


それはどうだろうかとリルは思った。

リルが旅をする目的は、他人からすれば「並みでない理由」と言い切れるほどではないのかもしれない。

きっと話せば笑われてしまう、馬鹿にされてしまうだろう。そんながらくた同然な、と。


それでもリルにとっては何より大切な約束だった。