突然の申し出に頭がうまく働かない。

つまり今すぐ王都に向けて出発するか、明日の昼ゆっくり向かうか、ということなのだろう。

それなら答えはもう決まっている。


「一緒に行きます。馬に乗せてください」


一刻でも時間を無駄にしたくない思いでそう告げると、彼は「それなら早く準備しろ」と言って立ち上がった。本当に今すぐ出発するらしい。

「よ、よろしいのですか?」

騎士団の人が焦ったように彼に尋ねる。

「ああ。この娘ならば心配はいらない。ただの常識しらずの田舎娘だ。でなければ簡単にあんなやつらの人質になどなっていないだろう」

「しかし!」

「道中はお前達もそばにいてくれるのだろう?何かあれば、その時は頼む」

そのやりとりは緊張感が漂っていていた。黙って聞いていると彼はリルに「早く」と鋭く言った。

リルはその言葉に弾かれるように準備を始めた。おじさん達に奪われたかばんを取り戻して、彼の元に向かう。

彼は騎士団の人数名と一緒に王都に向かうらしい。


何も見えない暗闇の中、ランプの灯りを頼りに馬を走らせる。


「ど、どうしてこんな時間に馬を走らせるのです?」

馬を走らせる彼にそう尋ねると「時間がないからだ」と言われた。

「お忙しいのですか?」

「忙しくないならこんな時間に馬なんて走らせない」

ごもっともで。リルは心の中でそう返事した。


しばらくすると東の空が白んでいくのが分かった。