「見事な千日紅だな。少し摘んでもいいか?」

「うん、大丈夫」


するとシオンはしゃがんで咲いている千日紅をいくつか摘んだ。広場の脇に生えていた色とりどりの野花も一緒に。

そして摘んだ花を組み合わせようと何かをしている。

何をしているのだろうと思っていると、シオンが尋ねた。


「花屋、千日紅の花言葉を知っているか?」


その言葉の意味を理解したリルは泣いてしまいそうで俯いて頷いた。

こぼれ落ちそうなのを必死に堪えてシオンに顔を向けると、シオンもリルを見ていた。

リルは泣いた。

何も言われていないのに泣いてしまった。堪えられなかったのだ。

そんなリルを見てシオンは溜め息を吐いて立ち上がると「何も言ってないだろ」と呆れた表情を見せて、リルの頭を撫でる。


「だって、泣くよ」


リルは腕で涙を拭きながら問いに答えた。


「千日紅の花言葉は、変わらぬ愛を永遠に」


「ご名答」とシオンは微笑んで、先ほど摘んだ花で作った花冠(リトル・クラウン)をリルの頭の上に乗せた。


「好きだ、リル。この先もこの気持ちは変わることはない」


初めて言われた好きの言葉に、やはりリルは泣いてしまった。

せっかく泣き止んだところだったのに、いつもシオンは泣かせにかかるのだ。

シオンは呆れているらしいが、これも全てシオンのせいだとリルは思った。