花舞う街のリトル・クラウン

「私が今ここにいるのは、シオンがいたからだ」


シオンに出会わなければ、リルが王都に来ることもなかった。

シオンがいなければ、フルリエルで働くことも、下宿することもできなかった。

アーディやメアと友達になることもできなかった。

王女の命も救えなかった。

シオンと出会えたから、自分の人生が変わったのだ。


けれどそれに気付かないシオンは「大袈裟だな」なんて言う。


「大袈裟なんかじゃない」


リルは真剣な顔でシオンを見つめた。

シオンはリルの表情に少し驚いて「どうした?」と尋ねる。


「私が王都に来たのは、探している人がいるからだって言ったよね」

「ああ、聞いた。見つかったのか?」


リルはその問いには答えずに、メアが直してくれたペンダントを服の中から取りだした。



「お前、それ、どうして…」



黄色い花のペンダントを見て、シオンは表情を強ばらせた。

シオンの記憶にあるそれと同じだったからだ。


「小さい頃、アルトワールのお祭りで、このペンダントを贈ってくれた男の子を探してる。

小さい頃、約束したんだ。

いつか必ずまた会おうって」


シオンは愕然とした。

自分も探していた少女が、まさか目の前にいるリルだなんて思ったこともなかったのだ。



「私、ずっとシオンのことを想ってた。

忘れた日なんて一度だってなかった」



それから持っていたシオンの花束を差し出す。



「私はあなたに会うために王都(ここ)に来たんだよ、シオン」