足を止めてシオンは「出迎えに行く」と告げた。
「相手はあのフルリエルだぞ。婚約の話よりずっと重要だ」
その言葉に誰も逆らえなかった。
異を唱える者もいなかった。
シオンの言葉は正論で、それと同時に、まるで刺すような殺気をシオンが身に纏っていたからだった。
何も言わない役人達を一瞥すると、シオンは部屋から抜け出し、走ってフルリエルの者を探した。
エリオットが言っていた一階の中央階段の辺りまで来ると、足を止めて息を整えながら辺りを見渡す。
フルリエルの者ということはおそらくオリバーか、と思いながら小さな老人を探している途中で目に入ってきた姿にシオンは愕然とした。
「リル?」
そこには想定していなかった友人の姿があった。
名前を呼ばれたリルはハッと顔を上げてその声が聞こえた方を見る。
名前を呼んだのがシオンだと気付いて、リルは思わず泣きそうになった。
(会えた。シオンに、会えた。)
近づいてくるシオンの姿に胸が高鳴るのを感じながら、けれど今は泣いている場合ではないと言い聞かせて笑顔を貼り付ける。
「シオン…」
シオンは少し息が荒くて、急いで来てくれたのだと嬉しく思うのと同時に、やはり時間がないのだと思わせられる。
「フルリエルが来たと聞いたが、お前だとは思わなかった」
その言葉に、リルは「私だってフルリエルの従業員だよ」と笑って答える。
訪れた少しの沈黙の後、リルは尋ねた。
「シオン、今日、忙しいって聞いたけど…」
するとシオンは「そうだな」と頷いた。
「クレーラと婚約するように強く言われてる」
その言葉にリルは身を固くした。
「相手はあのフルリエルだぞ。婚約の話よりずっと重要だ」
その言葉に誰も逆らえなかった。
異を唱える者もいなかった。
シオンの言葉は正論で、それと同時に、まるで刺すような殺気をシオンが身に纏っていたからだった。
何も言わない役人達を一瞥すると、シオンは部屋から抜け出し、走ってフルリエルの者を探した。
エリオットが言っていた一階の中央階段の辺りまで来ると、足を止めて息を整えながら辺りを見渡す。
フルリエルの者ということはおそらくオリバーか、と思いながら小さな老人を探している途中で目に入ってきた姿にシオンは愕然とした。
「リル?」
そこには想定していなかった友人の姿があった。
名前を呼ばれたリルはハッと顔を上げてその声が聞こえた方を見る。
名前を呼んだのがシオンだと気付いて、リルは思わず泣きそうになった。
(会えた。シオンに、会えた。)
近づいてくるシオンの姿に胸が高鳴るのを感じながら、けれど今は泣いている場合ではないと言い聞かせて笑顔を貼り付ける。
「シオン…」
シオンは少し息が荒くて、急いで来てくれたのだと嬉しく思うのと同時に、やはり時間がないのだと思わせられる。
「フルリエルが来たと聞いたが、お前だとは思わなかった」
その言葉に、リルは「私だってフルリエルの従業員だよ」と笑って答える。
訪れた少しの沈黙の後、リルは尋ねた。
「シオン、今日、忙しいって聞いたけど…」
するとシオンは「そうだな」と頷いた。
「クレーラと婚約するように強く言われてる」
その言葉にリルは身を固くした。


