花舞う街のリトル・クラウン

エリオットは部屋の扉の前まで来ると、扉をノックした。

すると中から年老いた役人が出てきた。不機嫌な彼の表情からするに、どうやら説得はうまくいっていないらしい。


「エリオットです。シオン様にお客様がいらしているのですが」


すると声が聞こえたのか、部屋の奥にいたシオンが顔を向けて「何者だ」と問うた。


「花屋フルリエルの方です」


シオンは不思議そうな顔をするが、役人達はみな眉間に皺を寄せてエリオットに詰め寄る。

「なぜフルリエルがシオン様のもとに訪れるのだ」

「花を届けにいらしています」

「ならば受け取り、客人は帰せ」


役人は吠えるように怒鳴った。


「シオン様はこれから婚約の儀をなされるのだぞ、貴様も分かっているだろう!いいからさっさと…」


しかし役人は最後まで言えなかった。

シオンが立ち上がったからだ。

みなシオンが何を言うのか固唾をのんで見守る。吠えるように叫んでいた役人は押し黙った。

シオンの紫色の瞳が皆を冷たく見渡していたからだ。

呼吸をする音さえ聞こえてくるような静まった空間の中で、シオンは静かに言った。


「花屋フルリエルがわざわざ城に訪れたということは、それは必要あってのこと。とても邪険には扱えない」


それからエリオットに近づいて小さく「どこにいる」と問うた。


「え、ええと、1階の中央階段近くでお待ちです」

「そうか」


戸惑うエリオットの答えを聞いて部屋を出て行こうとするシオンを、役人達は慌てて引き止める。


「シオン様!どこに行こうとなさるのです!」