花舞う街のリトル・クラウン

驚いたのは門番も同じだった。目を見開いて固まっている。

「門番!」とエリオットが叫ぶと、ハッと我に返った門番が勢いよく背筋を伸ばして返事をした。


「…花屋フルリエルの従業員、リルの入城を許可する」


高らかな宣言とともに門は開かれた。

悔しそうな表情をする門番に頭を下げて門をくぐると、優しく微笑むエリオットが「ご案内しますよ」と言うので、リルは彼の後をついていくことにした。

久しぶりに訪れた城内は相も変わらず色とりどりの花で溢れていている。さすがは花の国ダンディオーネのお城だ、とリルは思いながら、前を歩くエリオットに声をかけた。


「あの、助けてくださってありがとうございました」


するとエリオットは首を横に振り「礼には及びません」と言う。


「貴女は命の恩人です。他ならぬリルどのの願いとあらば、私にできることは何でも叶えて差し上げますよ」


その言葉を聞いたリルは、やはり出合いに恵まれたと思った。

リルが王都で出合ったのは、心優しくて、困ったときには助けてくれる優しい人々ばかりだ。


「リルどのはシオン様にお花をお届けにいらしたのですよね?」


エリオットの言葉にリルは頷く。


「直接お渡ししなければならないのです」

「左様にございますか」

エリオットは少しだけ表情を曇らせた。


「どうか、したのですか?」


嫌な予感を感じながら、リルは尋ねる。