花舞う街のリトル・クラウン

門番はそう言って高笑いをする。

リルはこれ以上ない屈辱を感じて腸が煮えくりかえってしまいそうだったが、それでも何とか口を噤んだ。

その時だった。


「リルどの？」


門の奥から柔らかい男性の声が聞こえてきた。

突然のことに驚いたが、リルはその人物を知っていた。


「エリオットさん！」


それはこの国でたった一人の姫君、リコリス王女の側近を務めるエリオットだった。

リルは彼に一度しか会ったことがないが、主人である王女を毒殺から救った命の恩人であるリルのことをエリオットが忘れるはずはなかった。


「どうなさったのです、このようなところに」

「ええ、実はシオン様に花を届けに参りました」

「ああ、なるほど。フルリエルのお仕事ですね」


和やかに親しく話す2人の様子を見て、門番は少し焦ったようにエリオットに「お知り合いなのですか？」と尋ねた。

「知り合いだなんて言葉では足りません！」


その言葉にエリオットは眉間に皺を寄せて、叫ぶように強く言った。


「この方は、あのオリバー・ラビガータどのが選ばれたフルリエルの従業員！しかも王女を毒殺から救ってくださったお方ですよ！」


それを聞いた門番は驚いた顔をしてリルを見つめる。

リルはエリオットの言葉を聞いてむず痒い気持ちになった。

命の恩人だなんて、大袈裟だ。こんな風に言われるほど凄いことをしたわけではないのに。