朗らかに微笑む門番の言葉に、リルは目を見開いた。

門前払いされるか咎められるかと考えていたリルにとって、まさかこんなことになるとは予想もしていなかったのだ。

リルは花束を自分に引き寄せながら、辛うじてこう言った。


「あ、あの、シオン様に直接お渡ししたいのですが…」

「それはならん」


先ほどまでの朗らかさはどこへやら、門番は切って捨てるように言い放った。


「シオン様はこれから大事な会合があるのだ。いかにフルリエルの者であろうと、今シオン様に会うことはできん」

「そんな!」


リルは目の前が真っ暗になりそうだった。

シオンに会うために、オリバーは知恵を貸してくれて、メアとアーディは心から応援してくれたというのに、会いにいけないなんて。


「なんとかなりませんか?どうしても直接お渡ししなければならないのです」


すると門番は「ならんと言っている!」と怒鳴った。それから眉を潜めてリルを訝しんだ。


「いくらフルリエルとはいえ、たかが平民であるお前ごときが王子にお会いできるわけがなかろう!

大体、お前は本当にフルリエルの従業員なのか?

疑わしい。まさか王子に接触しようとしている反逆者ではないだろうな?」


リルは激怒した。あまりに酷い言われように、堪忍袋の緒が切れる音が聞こえた。


「そんなわけないです!私はただ花を届けに来ただけで…」


「ならば花を渡して立ち去れ、小娘。お前ごときが謁見できると思い上がるな!」