必死に考えるリルの頭に声が響く。


『いつか必ずまた会おう』


幼いシオンとそう約束した。たしかに時を経て今シオンと出会った。話もした。


けれどシオンは気付いていない。

あの時の少女がリルだと分かっていない。




約束はまだ果たされていない。




考え至ったリルは気付いたら口にしていた。


「行かなきゃ…」


シオンに会いにいかなければならない。

シオンが他の誰かと婚約をする、その前に。

叶うはずのない想い、だけど婚約が決まってしまえば絶対に叶わない。わずかな可能性だって跡形もなく消えてしまう。

リルだって本当は願っている。できることなら、大切なこの気持ちが届くことを。本当は望んでいるのだ。


「シオンに、会いたい」


例えこの気持ちが届かないとしても、幼い頃の約束を果たさなければならない。

ペンダントを贈ってくれたこと、その男の子を探すために王都に来たこと。

アルトワールで、シオンのことを思い出さない日はなかったこと。


シオンに言わなくてはいけないことはたくさんあるのだ。



「私、シオンに会いに行きたい」



全てはシオンに会うために始まった旅だ。

シオンに何も話せなかったら、リルがアルトワールから王都へやってきた意味はない。



「リル、僕らにできることなら何だってする」


アーディは言った。その言葉にメアも頷く。



「…だけど、シオンは第一王子だ。リルが会いに行くのは至難の技だよ」