探していた人がシオンだったなんてことに気づかずにいられたらきっと、今こんなに苦しむことはなかった。

自分の初めての恋は叶わないと知って、こんなに悲しい気持ちになることもなかった。


こんな苦しい思いをするくらいなら、ずっと見つからなければ良かったともリルは思った。

アルトワールの田舎の村で花を育てて、ときどきあの男の子のことを思い出して、どうしているのだろうかと懐かしく思っている方が、ずっとずっと良かった。


ちらりとテーブルの上を見ると壊れたペンダントが静かにそこに佇んでいた。

まるで最初から壊れることが分かっていたみたいに静かだった。


「あのペンダント、シオンがくれたんです…。ずっと昔、アルトワールのお祭りで…。それからずっとシオンを探していました…だけど…」


壊れたペンダントは、まるでリルの恋が叶わないことを暗示しているみたいだった。

大切にしてきた気持ちも、こんな風にいとも簡単に壊れてしまうのだと。

リルの恋が叶わないことを最初から知っていたみたいに。



「オリバーさん、どうして真実はこんなに残酷なんでしょうか…」