「ペンダント…良かった…」


また無くしてしまったのではないかとリルは恐れていた。

この手のうちにあったのにいつの間にか消えてしまっていたら、と思うと怖くてたまらなかった。

安堵の表情を見せるリルに、オリバーは「ずっと握っておったんじゃよ」と言った。


「熱が出て意識ももうろうとしているのに決して離そうとしなかったんじゃ。余程大切なものなんじゃな」


その問いにリルは頷いた。


「それが…私が王都に来た理由、ですから…」


このペンダントを贈ってくれた男の子を探すこと。

その男の子ともう一度会うこと。

そのためにリルは王都にやって来た。

相手はもう忘れているかもしれないけれど、それでも幼い頃に交わした約束を果たすために。


王都にやって来て、リルは目的は果たせた。

探していた男の子がシオンであることが分かった。彼が何者であるかも分かった。話すことだってできた。

嬉しいはずなのに喜べないのは、叶わぬ恋をしていたことに気付いたからだった。

リルの脳裏にはシオンが浮かんでいた。

フルリエルやリュートの店で馬鹿笑いしたときのこと。祭りの屋台を一緒に回ったときのこと。王族として凛とした表情を見せたときのこと。

そして、アルトワールでの出来事を語ったあの顔。


思い出して涙が滲んだ。


気付かずにいられたら、どれほど良かっただろうと思う。