芝生の上のみならず、花と花の間を掻き分ける様にして見落としてしまわぬように。

泥だらけになろうと、雨に濡れようと、それでもリルは決して諦めなかった。


雨に濡れた体は簡単にその温度を奪われていく。

まだ冬でもないのに、リルの体は冷え切っていた。寒くて体が震えるが、それでも見つけたい気持ちの方がずっと強かった。

温度を奪われた体は震えて手がかじかむ。

それでも必死に掴んで掻き分けた白いエトメリアの花の沸きに、探していたペンダントは落ちていた。

ガラス玉の蓋は割れて、中の花と外気が触れ合っている状況になっているけれど、どの花も欠けずにあった。


「良かった…」

俯きながらペンダントを両手で抱きしめて胸に当てる。


リルは、これさえ見つかったならそれだけで十分だと心から思った。

このペンダントは生涯大切な宝物。シオンとのつながりだ。


ペンダントが無事見つかり、リルはフルリエルへと帰らねばならなかった。

帰りが遅いとオリバーも心配しているかもしれない。

まず帰ったら帰りが遅くなったことをオリバーに謝らなくては、と思って立ち上がり荷台の方へと向かおうとしたその時だった。


踏み込んだ足からそのまま崩れていく。


「え?」


徐々に近づていく地面と、触れた芝生の感覚。

ああ、自分は今転んだのだと気づいたときにはリルは倒れていた。

こんなところで転んでいる場合じゃない。

けれど体は動かない。

どうして、と思いながらリルは閉じていく視界に抗うことができなかった。

ただ握りしめたペンダントの感覚を感じながら、真っ暗の視界の中、意識を手放した。