外の明かりだけを頼りに、長い階段を二人で降りていく。

会話は当然なかった。

自分よりも数段先を歩くシオンの背中を見据えながら、残酷な現実を恨んだ。


恋はなんて残酷だろう。


シオンに恋をして、叶うわけがないのに。


どうして彼に恋をしてしまっていたんだろう。


そう思えば思うほど、涙が溢れて止まらない。


服の下の胸元のペンダントを痛いくらいに握りしめる。


今思えば、リルはずっと昔からシオンのことが好きだった。

幼いころにこのペンダントをもらってから、ずっと好きだった。


それから何年も経った今もシオンが好きだ。



それでも、この恋は叶うわけがない。



シオンはこの国の国王だが、リルはアルトワールの農家の出で花屋のアルバイトだ。

あまりに身分が違いすぎる。


諦めなければならない。


結論は出ているのに涙が溢れて止まらない。

頭では理解できているのに、感情が追いつかないのだ。


もしできるなら、諦めたくない。好きなままでいたい。

そんな淡く切ない気持ちをリルは呑み込みながら、目の前を歩く大切なひとの背中を見つめていた。