遥か頭上に見えていた小さな四角の灯りも、階段を登るごとに徐々に大きくなっていく。

やがて一際大きな四角い光が見えてきたかと思うと、それは外へと続く出入口だった。

ようやく終わりが見えてきた、とリルは息を切らしながらもようやく見えた希望に胸を膨らませて一歩一歩上り詰める。


四角くくりぬかれたような出口の、強く白く光る外に一歩踏み出せば、白い光の向こうから飛び込んできた鮮やかな青に目が染みた。


ついにたどり着いた塀の上は、想像していたよりもずっと広かった。

そしてどこまでも見渡せた。

王都だけではない、塀の外に広がる田畑も、山も、その向こうに広がる広い海までも。

その開放感に、今までの疲れなど吹き飛んでいくようだった。


「うわあ、綺麗…!」


散り際のエトメリアの花弁を運ぶ心地よい風が、ざあっと吹き抜けていく。



「王都でいちばん空が近い場所だ」


シオンは空を見上げるので、リルもつられて空を見上げた。

どこまでも続く青い空はいつもよりずっと青くて、見続けていると吸い込まれそうで、思わず体が震えた。

そんなリルをシオンは笑ったが、リルは反論するよりもその空の青に魅了されてしまっていた。

手を伸ばせば届きそうに思えて、その手を伸ばした。

けれど届くはずもなくて、指の間を風がすり抜けていくだけだった。