「軍のものだ。塀の上へ行くために、王都の外からやってくる敵を迎撃するために作られた」


シオンはようやく答えたが、なぜリルをこんな場所に連れてきたのかその理由は分からないままだった。


「まだ体力はあるか?」


突然尋ねられたことに、リルは驚きながらも頷いた。

シオンは「さすがはフルリエルの従業員だ」と言うと上を指さした。


「登るぞ」


リルは目を見開いて絶句した。





階段を登っていくと、その途中に窓があり心地よい風が吹き込んでくる。

暗く閉ざされた塔の中に穏やかな日差しをくれて、長い階段を登るのもくじけそうになる心を励ましてくれるようだった。


「シオン、なんで登るの…?」


息も絶え絶えに尋ねると「用事があるからだ」とシオンは涼しい顔をしていた。


「用事…?それに私も関係してるの…?」


けれど答えは返ってこない。

ただひたすらに階段を登るシオンの背中を見つめながら答えを考える。

シオンが答えを言わないということは、肯定の意味か、それともすぐに分かるからだろうか。

後者の意味なら、疑問も全てこの階段の先にあるはず。

こうなったら何が何でも登ってやる。

リルは果てしなく続いているようならせん階段の先を睨みつけて、この1歩が頂上に近づいているのだと信じながら、すっかり重くなった足で一段一段踏みしめた。