「え、いや、あの…私未成年ですし…」

「んな固いことはいーじゃねーか!今日は祭りだ、祭り!酒を飲まなくてどうするってんだい!」


変な人に絡まれてしまった、どうしようかと思っていると後ろから声がとんできた。



「どうするもねえだろうが」


「シオン!」


その瞳の鋭さは、楽しく浮かれたお祭り気分の心をどん底に突き落とすほどだ。

酒に酔ったおじさんだけでなく、守られているはずのリルでさえ縮こまりそうだった。



「お前が勝手に酒を飲むのは構わんが、未成年に飲酒を勧めるな。牢屋にぶち込まれたいのか?」



その手は腰に下げた剣の柄を掴んでいて、今すぐにでも引き抜きそうな迫力があった。


「ヒイ!」と引きつったような短い悲鳴を上げると、おじさんは狼狽えながら逃げていった。


「…ったく」


シオンは溜め息を吐くと剣の柄から手を離す。


「シオン、あの、ありが…」


あろがとう、と言おうとしたリルに被せるように「なにしてる」とシオンはアーディに言う。


「へ?」


アーディは目を点にした。まさか自分に話しかけられるとは思っていなかったようだ。


「メアが店の奥に入っていったぞ。あの集中状態のメアを止められるのはお前だけだろ」


その声にアーディは「行くね」と言うが早いか駆けだして行く。