訪れた市場はいつになく盛り上がりを見せていた。

屋台もずらりと並んでおり、普段以上に大勢の人が詰めかけていてごった返している。

昨日の王城誕生祭当日もかなりの盛況ぶりだったが、今日はまた一段と騒がしい。


「流石は後夜祭、盛り上がってるわね」


メアは目を輝かせていた。

その隣にいるアーディは「もっと盛り上がるのは夜なんだ」と言う。


「後夜祭は花火が打ち上がったり、民家にいる人も皆出てきて歌ったり踊ったりして最高に盛り上がるんだよ」

「きっとリルも楽しめると思うわ」


話を聞いているだけでもたのしそうなのが伝わってくる。

夜が待ち遠しく思うが、今はまだ日も高い。

屋台めぐりをしようというメアの提案に一同は賛成し、リル達は屋台を見て回った。



「わあ、見て、あの装飾屋!きれい!」


可愛いものに目のないメアは、装飾品屋のテントを見つけると、リルの手を掴んで一目散に走って行った。


「これ、ここの手作り?」


目を輝かせるメアに、店主のおじさんは得意げに「そうだ」と頷く。

メアが見つけたのは、白い小花のペンダントだ。あまり見かけない金具が使われているらしく、メアはじっくりとそれを眺めた。

花を模した金具には、ダンディオーネとは縁遠い民族的な模様の介細工が施されている。リルも初めて見るものだった。


「これは、これに使ってる金具はあまり見かけないわ。どこから手に入れているの?」

「ルネットだ。独自の入手先があるもんで」

おじさんは得意げな顔をして答えたが、「どうしてそんなことを聞く」メアを睨む。

「同業者か?」