予想もしていなかったのか、シオンの切れ長の瞳が見開かれた。

その反応に恥ずかしくなったリルはいいわけをするように言葉を続けた。


「あの、王族誕生祭、アーディとメアと回ろうって約束をしているんです。だからその、せっかくだからシオンも一緒にみんなで回りたくて…忙しいとは思うんですけど、でもあの、もし暇があったら…」


黙ってそれを聞いていたシオンは「いいのか?」と聞いた。


「そんなことで、いいのか? 宝石や金とかじゃなく、そんな小さな、望みとも言えないような小さなことで」


リルは「それがいいんです」と言った。

王族であるシオンと城下を歩きたいなんて、こんな一市民である自分が言い出すにしては贅沢すぎる願いだともリルは思っていた。

シオンはどう言うだろうかとそっと見上げると、「お前がそれでいいのなら」とシオンはそっぽを向いて答えた。

それはきっと了承の意味だ。そう気づいたリルは花が咲くみたいに笑った。


「ありがとう」


きっと明日はいつもより楽しくなる。

そんな予感でリルはいっぱいだった。