「そんなことはない」とすぐにシオンが言う。


「危ないとお前が気づいたから、リコリスは無事だった」


「その通りですわ」と王女は一歩前に出てリルに言う。


「貴女がいなければ、わたくしはバーキット伯爵に毒殺されていました。貴女は命の恩人ですわ」


「何か褒美をとらせてはどうでしょうか」と王女はシオンに言う。


「確かにな。第一王女のリコリスを毒殺から救った功績は何より大きい。相応の褒美があって当然だ」


いつもはぶっきらぼうなシオンがリルの目を真っ直ぐ見つめている。

その美しい紫色の瞳に吸い込まれてしまいそうで、リルの思考は完全に停止してしまいそうだった。


「何か望みはあるか?何でも叶えるぞ」


そうは言われても、リルには望みなんて一つしかない。

それはペンダントの男の子と再び出会うことだが、それは叶えてもらうものではなく自分で叶えたいものだ。

それ以外に望みなんて、と思ったがふっとひとつ思い浮かんだ。


「何でもいいんですか?」

「ああ」


シオンの言葉を聞いたリルは「じゃあ」と拳を握りしめた。


「シオン、明日、一緒に城下を回ってくれませんか?」