花舞う街のリトル・クラウン

不吉な予感を感じ取ったリルは手を広げて王女を守りながら、伯爵の動向を注意深く見つめる。


「…そうだ…小娘、お前さえいなければ…お前さえいなければ!」


伯爵は腰に下げていた剣を抜いた。

女中は驚いたように甲高い叫び声をあげたが、王女は視線を鋭くしただけだった。


「…殺してやる…お前を殺して、王女も!そしてわがものにしてくれよう!」


その血迷った目を見据えながらも王女を守ったまま、リルは少しずつ後ずさり距離を取る。


「ついに本性を現しましたわね、バーキット伯爵」


王女は冷たく言い放った。


「わたくしを殺せばあなたは王族殺しとしての罪を背負うことになりますわよ」


しかしその言葉も今のバーキット伯爵には届いていないようだった。


「…貴女が悪いのです、リコリス王女。…貴女が私のものにならないから!」


バーキット伯爵はその剣を振り上げた。


「貴女が亡くなれば、貴女は永遠に私の物だ」


にやり、不気味に笑ってその剣を振り下ろす。

もうこれまでかもしれないと王女を庇い目を閉じたその時だった。


__キン、と金属のぶつかる音がした。



「__城内で刃物を振り回すとはな。無礼だと切られても文句は言えないぞ、バーキット伯爵」



聞き覚えのあるその声にそっと目を開けると、そこにはシオンがいた。

振り下ろされるバーキット伯爵の剣を、シオンが剣で受け止めてくれていたのだ。