花舞う街のリトル・クラウン

「花の国の貴族であられるバーキット伯爵様ならばご存知かと思いますが」と前置きをするとリルは語りだした。


「ポンパルドは花の色によって花言葉が異なります」


赤、白、青、それらの花言葉はどれも美しい。凛として咲くポンパルドらしい、鮮やかで明るい花言葉だ。


「紫のポンパルドは他のものと違うのです」


紫は赤と青が混ざった色。

どちらの色に近づこうとしても、どちらの色にもなれない。

赤と青、そのどちらも望むのに、その両方とも手に入れることができない、そんな色だ。

そこから紫のポンパルドに与えられた花言葉は「嫉妬」、「復讐」、「裏切り」。


「そんな花言葉を王女に贈るはずがありません」


リルの言葉に、伯爵は笑いをひきつらせた。


「そんなもの、ただのいいがかりだ」


「まだあります」


リルは言葉を被せる。


「伯爵がお出ししたその菓子。ポンパルドの花があしらわれていますが、ポンパルドは毒を含みます。その毒は強く、一度口にすると死に至る」


王女は目を見開いた。


「食用のものがあるのではないですか?」


その問いにリルは首を横に振る。


「ポンパルドの花の色素にその毒は含まれています。唯一毒のないのは白いポンパルドの花ですが、菓子にあしらわれていたのは赤いポンパルドです」


王女は「そう…」と目を細めて、伯爵を見つめる。


「こっ、この者の言うことを信じるのですか、リコリス様!」


伯爵は取り乱したように王女に訴える。