花舞う街のリトル・クラウン

王女の手を叩いた弾みで薄桃色の菓子は宙を舞って床に落ちる。


「な、何をするのだ貴様!王女に向かって!」


バーキット伯爵は立ち上がってリルを睨みつける。けれどそれに臆することなくリルは王女の目をじっと見つめた。


「リコリス様、この菓子を食べてはなりません!」


「…どういうことですの?」


王女は首を傾げる。

何が起こったのか分からないと言う表情をしている。

リルは振り返って「バーキット伯爵様」と厳しい表情をしてリルを睨みつける彼を見据えた。


「ポンパルドの花言葉をご存知ですか?」


伯爵は「当然だろう!」と声を張り上げる。


「この花の国ダンディオーネの貴族である私が花言葉も知らないと思っているのか?貴様、この私を侮辱するつもりか!?」


逆上する伯爵に「侮辱するつもりはございません」とリルは冷静に言った。


「しかし、王女に毒を盛るなど私は断じて許せません!」


その言葉に一同が目を見開いた。


「毒を盛る…?」

王女は呟くが、その隙に女中とエリオットが王女を取り囲み伯爵から遠ざける。


「な、なんてことを言い出すのだ!ふざけるのもいい加減にしろ!」


伯爵は怒鳴るように大声を出してリルをぎっと睨みつける。


「証拠もなくそんなことを…」

「証拠ならございます!」


そのやりとりを見ていた王女は「リル」と鈴のなるような声でリルを呼ぶ。


「その証拠とやらを見せなさい」


その凛とした表情に、リルは頷いた。