花舞う街のリトル・クラウン

「まあ、可愛らしい」

菓子の箱を覗き込んで王女は愛おしそうに目を細めた。


「隣国から輸入したものでございます」


「そうなのですの?」なんて嬉しそうに王女は言う。


「なんでもポンパルドの花をあしらっているとか」


バーキット伯爵の言う通り、薄桃色の菓子の中心にはかわいらしい4枚の花弁が集まってできた小さな花があった。

ポンパルドは4つの花弁が集まってできた小さな花が数千個、球状に集まってできた花だ。その一つなのだろう。


「まあ、ポンパルドに食用の物があったとは知りませんでしたわ。食べてはいけないものと思っていましたの」

「ええ、私もつい最近まではそのように思っていたのですが」


バーキット伯爵はそう言って笑った。

にやりと口の端だけをあげるような不気味な笑い方で。


胸騒ぎがする、とリルは思った。

だけどそれがなんだか分からないままでいる。それがもどかしい。

考え込んでいると、紅茶や菓子とは違う優しい香りが鼻をくすぐった。


それはポンパルドの花の匂い。

王女から受け取ったポンパルドの花束をリルはまだ抱えたままだったのだ。


ポンパルドは赤、白、青、紫の4種類の色がある。大きさこそ様々だが色はこの4つの他はない。

またポンパルド全体の意味では「高貴な人」という花言葉を持つが、色によって花言葉が異なるのが特徴だ。

赤は「祝福」、「尊敬」、「愛情」。

白は「光栄」、「英知」。

青は「優美」、「繊細」。

紫は…。


「では早速いただこうかしら」と王女は菓子に手を伸ばす。

そして口に入れようと菓子を近づけたその瞬間、リルは王女の手を叩いた。