花舞う街のリトル・クラウン

王女はその手を振り解くと「それは私の決めることではありませんわ」と言う。


「私の将来はこの国の未来のためにあるのですもの。そしてこの国の未来は国王がお決めになることですわ」


バーキット伯爵は王女に惚れ込んでいるらしく、どうやら結婚を迫っているらしかった。

リルはちらりと女中を見ると、やはり女中は心配そうに2人のやり取りを見守っている。見守っているというよりは、いつ止めに入るべきか窺っているようだった。


「私は王女だけを想っております。いつまでも」

「お気持ち、とても有難く思いますわ」


きっぱりした王女の対応に流石に諦めたらしいバーキット伯爵は「贈り物がまだでした」と言うと、付き人を呼んだ。


「どうぞお受け取りください」


そう言って跪くと花束を渡す。

王女は「ありがとうございます」と花束を受け取った。


「これは…ポンパルドですわね」


小さな小さな花が球状に集まって咲く花、ポンパルド。

様々な色があり、その愛らしい見た目から贈り物にされることも多い。


「ポンパルドの花言葉は【高貴な人】。貴女にぴったりだと思ったのです」


そう、ポンパルドの花言葉は【高貴な人】。王女に贈るには何の不思議もない。


「そして、こちらも」


バーキット伯爵はさらに美しく飾られた箱を王女に差し出した。


「菓子でございます。王女も今日はお疲れでしょう」