花舞う街のリトル・クラウン

王女が考えていた通り、贈り物の大半は花束だった。

それも花の国らしく貴重な花から管理が難しい花まで、ありとあらゆる花が届けられて、王女の部屋はまるで花園のようだ。

これは確かに花を専門で管理する者が必要になる。

リルの他にも女中が2人と王女の執事であるエリオットがいて共に贈り物の管理をしているがそれでも手が回らない。

花屋であるリルが指示を出しているためにまだすっきりとまとまりを保てているが、少し目を離すと花で埋もれそうだ。

花の匂いが部屋中に充満して吐き気さえ感じそうになった頃、「バーキット伯爵様が参られました」という声が聞こえてきた。

まだレオナード伯爵がいるというのに、また貴族がやって来るのか。リルはそう溜め息を吐きたくなったが、周りにいた2人の女中とエリオットがその雰囲気を固くしたのを感じた。


「どうかされました?」


表情を注意深くし眉間に皺を寄せる女中は、リルに「実は…」と話そうとしたのだが、それと同時に扉が開いた。


「リコリス王女様、この度はお誕生日誠におめでとうございます」


恭しく頭をさげるバーキット伯爵に、リコリス王女は「ありがとうございます」と変わらず返事をする。

バーキット伯爵は30代くらいの男性だ。細長い顔に不気味な笑みを浮かべている。


「あんなに小さかった貴女がもう18歳とは、いやはや時間とは早いものですな」


王女は「そうですわね」と愛想笑いをする。

そんな王女を見つめていたバーキット伯爵は不気味な笑みを浮かべたまま、王女に近づくとその手をとった。



「いかがです、王女。心は決めて頂けましたか?」