「記念品や物であれば何も問題はありません。ですがここは花の国、恐らく贈り物の多くは花でしょう」


「つまり、花の管理を頼みたいと?」


王女はくるりと振り返ると「まあ、頭の回転も速いお方なのね」と微笑んだ。

それから王女は真面目な顔をしてリルを見つめた。


「折角お花を頂いても、管理や処置が悪ければすぐにその命を失ってしまいます。少しでも長く美しく保つためには専門的な知識がいるのです。だからこそフルリエルの従業員であるリルどのにお願いしたいのですわ」


リルはしばらく王女の目を見つめて、それから頭を下げた。


「承知しました。その任、務めさせていただきます」


それを聞いた王女は「良かったですわ」と微笑んで、「では、早速」と言った。


「さっそく?」


リルが顔をあげて首を傾げると、後ろのドアがバタンと開いた。

そちらに目をやると、城の女中達が数人入ってきた。

「よろしくお願いしますわ」と王女が言えば、「畏まりました」と声を揃えて、「参りましょうか、リル様」と言う。


「…はい?」


「時間がございませんので、手荒なまねをいたしますがお許しください」


「へ?え?」


リルの返事を聞く前に部屋から連れ出され、着替えや髪を整えられて、女中がいなくなる頃には、リルはすっかり城の女中の格好をしていた。


「リコリス様!」


慌ててリコリス王女の部屋に駆け込むと、王女は優雅に茶を飲んでいた。