王女は微笑むだけで何も語らない。

けれどリルは、王女は知っていると思った。シオンと仲良くしていることを知っていると。

何を言われるだろうかと注意深く王女を見つめていると、「どうか勘違いなさらないでくださいね」と言われた。


「わたくしは決して、貴女を咎めたり罰したりしようなどとは思っておりませんわ」


リルが少し気を緩めるが、王女は「ただ」と言葉を続けた。


「あの女嫌いのシオン兄様が気に入ったお方です。どんなお方なのかとても興味がありますの」


ああ、第二王子の妹だ、とリルは思った。言っていることが全く同じだ。

弟妹からそろって「女嫌い」と言われ、仲良くしただけで興味をもたれるなんて、シオンは一体今までどんな振る舞いをしていたのか疑問だ。


「聞けば貴女は花屋フルリエルの従業員だそうですね。あのオリバーさんが認めたとあれば尚のこと。貴女に頼みたいことがありますわ」

リルは緊張しながら「何でしょう」と尋ねる。

王女はにっこり微笑んだ。


「今日一日、わたくしの付き人をお願いしたいのです」


リルは目を見開いた。


「えっ、私が、王女の?」


信じられない申し出だった。リルは城仕えでも何でもない平民だ。


「今日はわたくしの誕生日で、貴族の方々が誕生祝いをお持ちしてくださるそうですわ」


姫は立ち上がり窓の近くに行くとその外を見つめた。